「40代・50代はPCを使えない人が多い」という説は本当でしょうか?
結論から言いますと、
「40代・50代は、パソコンを使えない人が多い」
というデータはなく、
「40代・50代 ”だから” 使えない」
という説も、正しくありません。
実態は「年齢」ではなく、
過去の「職種」や「個人の環境」によるもののほうが圧倒的に多いです。
本記事では、
- 40代・50代のスキル格差の正体
- スマホ世代である若者との比較
- 「使える・使えない」の理解の差
までを網羅的に解説します。
この記事を読むことで、
たんなる世代論ではない「スキルの本質」が理解できます。
世の中の思い込みに反論できて、
年齢にかかわらずパソコンに向き合う自信を取りもどせます。
40代・50代のパソコンスキルの実態

私も50代です
私は60にちかい50代です。
ちょうど「パソコンが使えない世代」と
思われがちですが、じつは全世代の中でも
かなりパソコンにくわしい人間です。ソフトウェアエンジニアですから。
大学時代
はじめてパソコンにふれたのは
大学に入った1980年代なかば。プログラミング実習で Fortran を学びました。
その後、研究室では
NECの98シリーズや Sun の UNIXシステムを使い、
X Window にふれ、タイピングや C言語も身につけました。
1990年代
1990年代のはじめには
外資系のコンピュータ企業(いまでいう IT企業)に就職。
1995年、Windows95 が発売された年には
アメリカ・フロリダへ出張していて、現地での発売をよく覚えています。
2000年代以降
その後は Windows にかぎらず、
さまざまな OS を経験しました。
Linux, AIX, Windows Server など・・・。
いまは SEとして技術サポート部門で働いています。
大学に入る前はパソコンに触ったことがなかった
この経歴からわかるように、私はコンピューターのプロです。 ただ、
高校まではまったくコンピューターに触れたことがありませんでした。
これは時代的に、同世代の多くが同じ状況だったと思います。
大学に入ってから興味を持った人が、
アルバイトでお金をためて NEC98 やマッキントッシュを購入する程度でした。
私の家内も当時
NEC98 のパソコンを、モニターやキーボード、プリンター込みでおよそ100万円で買ったそうです。
そんな時代でしたから、
私の世代は「機会がなければパソコンに触れることはない」という環境にいました。
もちろんスマホや携帯電話などはまだ存在せず、パソコンを扱うのはごく一部の人に限られていたのです。
Windows95・XPブームで、触れる機会があった人たち、なかった人たち
世の中の多くの人がパソコンに触れ始めたのは、
Windows 95 や XP が爆発的に普及した1995年ごろからです。
その頃、私たちは20代〜30代の若手から中堅社員でした。
多くの企業が業務にパソコンを導入し、
そこで働いていた人たちは自然とパソコンを習得していったのです。
その時期から現在に至るまで、
継続的にパソコンスキルを磨いていったのです。
一方で、
当時の職場でパソコンをあまり使わなかった人たちは、
スキルを高める機会を得られないまま年月を重ねてしまいました。
この「黎明期に経験したかどうか」が、
現在の世代間のスキル差として表れているのだと思います。
40代・50代は二極化している
なので、40代・50代の人間は
「二極化」が進んでいます。
一部が仕事でパソコンスキルを深く磨いた一方、
スマホ中心の変化で更新が追いつかない層が増え、
「非常に詳しい人」と「全く使えない人」の差が大きく開いています。
そのため、一部の「使えない事例」だけを見て、
世代全体のパソコンスキルが低いと結論づけることは、実態と異なっていると言えます。
若年層と40代・50代のパソコンの習得方法の違い

現在の若年層と決定的に違う点は、
40代・50代の幼少期には「家庭にパソコンはなかった」、という点です。
40代・50代の幼少期にパソコンは普及していなかった
昭和の時代には、
学校の授業科目に情報処理やパソコンをつかう授業はありませんでした。
ですから、
この世代のパソコンスキルは
子どもの頃から自然に身につけたものではなく、
社会に出てからの
- 業務上の必要性
- 個人の意欲や趣味
によって後天的に獲得されたものです。
自然に学べる環境がなかったため、
意識的に習得したかどうかが、そのままスキルの有無に直結しています。
40代・50代の二極化は職業によるもの
統計的なデータはありませんが経験上、
パソコンスキルの有無を決定づける最大の要因は「年齢」ではなく「職業」「趣味」でしょう。
対して、建設、物流、飲食、一次産業など、
現場での身体活動が主となる職種では、
業務でパソコンを使用する機会が極端にありませんでした。
そのため、
年齢に関わらず操作に不慣れなケースが多く見られます。
これは能力の問題ではなく、環境要因による結果と言えます。
若年層は小学校高学年からパソコン
対して、若年層の場合、
社会人や大学入学後に初めてパソコンに触れるケースは少数派です。
2025年の調査によると、
高校生の73%が中学入学までにパソコンを使い始め、
「使ったことがない」人はわずか2%程度です。
この背景には
GIGAスクール構想やプログラミング教育の影響があります。
今の世代は、
小学校高学年からパソコンに接触する機会があります。
若年層の「パソコン離れ」が指摘されることがありますが、教育現場では早期活用が進んでいるようです。
若年層と40代・50代のパソコンスキルの意味の違い

こうした時代背景や、習得した環境の違いのため、
「パソコンが使える」という意味が、世代間でも違う
というおもしろい傾向があります。
同じ「パソコンを使える」と言っても、
その中身は若者と40代・50代とは違っているのです。
直感的な操作の若者、基礎知識の40代・50代
若年層は直感的なアプリ操作には長けていますが、
パソコンの基礎知識は中高年層の方が詳しい、ということも多くあります。
一方で40代・50代は、
性能が低かったパソコンに触れてきたためか、
ディレクトリ構造やOSの仕組みといった「基礎知識」が身についていることが多いのです。
文書作成スキルとWeb活用スキル
40代・50代にとっては
「Officeソフト(Word・Excel)が使えること」
が「パソコンを使える・使えない」の基準になりがちです。
逆に若年層は、
ブラウザ操作や動画編集、SNS活用などの「Web活用スキル」を
「パソコンが使える」としている傾向があります。
トラブルシューティング能力の違い
さらに、意外にも
トラブルシューティング能力(問題解決力)については、
40代・50代のほうが高いようです。
若年層はスマートフォン中心の生活でパソコンをあまり使わず、
「使えるけど使わない」
「必要なときだけ触る」
という人が多いようです。
そのため、パソコンの細かい操作やトラブル対処への経験が浅く、
問題発生時にすぐ諦めてしまうことがあります。
逆に40代以上は
パソコンの基本操作を社会人経験で身につけているので、
問題が起きても色々試しながら解決しようとする傾向があります。
ですので経験値的にトラブル対応力が高いと言えます。
まとめ:年齢による割合よりも個人の意思と必要性
ここまで見てきたように、
「50代はパソコンが使えない」
という説には根拠がなく、パソコンスキルに年齢は関係ないというのが結論です。
使えない人がいるとすれば、
それは年齢のせいではなく、
「これまで使う必要がなかった」
「覚えようとしなかった」
という環境や個人的な理由によるものです。
実際に、
60代でもプログラミングを習得する人がいる一方で、
20代でもキーボード入力ができない人はいます。
重要なのは「何歳か」ではなく、
「今から覚えようとする意思があるか」です。
50代の皆様は、
これまでの経験という土台がある分、
学び直せばすぐに若者以上のスキルを発揮できるポテンシャルを秘めています。




